「親に遺言書を書いておいてほしい。でも、なかなか言い出せない……」
そんなお悩みはありませんか?
子どもとしては、将来の相続で家族が困らないように、元気なうちに遺言書を準備しておいてほしいものです。
しかし、親に遺言書の話をするのは、なかなか難しいものです。
- 機嫌を損ねてしまうかもしれない。
- 財産を狙っていると誤解されないだろうか。
- 親はまだ元気なので、相続や遺言にはまったく関心がない。
- 話を切り出しても、いつもはぐらかされてしまう。
このような理由から、遺言書の必要性を感じながらも、話を切り出せずにいる方は少なくないでしょう。
では、どうすれば親に遺言書について考えてもらえるのでしょうか。
今回は、親の気持ちを尊重しながら、無理なく遺言書の準備につなげるためのアプローチを考えて見ましょう。
ポイントは、最初から遺言書を書いてもらおうとせず、気軽にできることから少しずつ始めること。そして、最終的には親自身の意思に任せることです。
①断捨離や自分史づくりから気軽に始める

最初から「遺言書を書いてほしい」「終活を始めてほしい」と伝えると、抵抗を感じる親御さんもいらっしゃいます。
「終活」という言葉に、いよいよ死期に向けた準備という印象を持つ方もいるからです。
そこでおすすめしたいのが、断捨離や自分史ノートづくりなど、もっと気軽に始められることです。
断捨離は、今の暮らしを快適にするためのもの
「断捨離」ということなら、終活のイメージとは違い、不用品を整理して快適に暮らすための前向きな活動として受け入れてもらいやすいかもしれません。
例えば、
「家の中の使っていないもの、一緒に整理しようか?」
「使わないものがあったら、フリマサイトで売るのを手伝うよ」
こんな声掛けなら、比較的自然に始められるのではないでしょうか。
物を整理しているうちに、大切にしたいものや、家族に引き継ぎたいものについて、自然と話が広がることもあるかもしれません。
自分史ノートで人生を振り返る
もう一つおすすめしたいのが、自分史、つまり人生を振り返るノートづくりです。
生前・終活に書くノートといえば、『エンディングノート』が一般的です。
でも、エンディングノートにも「亡くなる前の準備」という印象を持つ方がいるかもしれません。
それなら、まずは自分史づくりから始めてみてはいかがでしょうか。
『自分史ノート』、『振り返りノート』といった商品が出版各社から販売されています。
子どもの頃の思い出、学生時代の出来事、仕事のこと、結婚や子育て、家族旅行の思い出など。
昔の写真を見ながら、夫婦や親子で思い出話をするのも楽しいものです。
「お父さんが若い頃は、どんな仕事をしていたの?」
「この写真はどこに旅行したときのもの?」
そんな何気ない会話から始めてみましょう。
人生を振り返ることは、自分が何を大切にしてきたのか、そしてこれから何を大切にしたいのかを考えるきっかけにもなります。
その延長線上で、いつか家族に伝えておきたいことや、自分の財産をどう残したいか、など、先のことについて考える機会が生まれるかもしれません。
最初から遺言書を目標にするのではなく、まずは親子で気軽に取り組めることから始めてみましょう。
②子どもの希望ではなく、親自身の意思を大切にする

遺言書を書いてほしいと考える子どもには、それぞれ理由があると思います。
「兄弟で相続争いをしてほしくない」
「不動産の相続で困りたくない」
「将来の手続きをスムーズに進めたい」
いずれも、もっともな理由です。
しかし、親に遺言書を勧めるときには、一つ気を付けたいことがあります。
それは、子どもの希望を押し付けないことです。
例えば、
「土地は長男が継ぐべきだから、そう書いておいて」
「後で揉めるから、財産の分け方を今決めておいて」
「畑なんていらないから、お金をちょうだい」
こうした言い方では、親御さんは自分の財産について子どもから指図されているように感じてしまうかもしれません。
そもそも、財産は親御さん自身のものです。
誰に何を残すのか、あるいは遺言書を作るのかどうかも、本人の意思が尊重されるべきです。
そこで、例えば、
「お父さんは、将来自分の財産をどうしたいと考えている?」
「家や土地について、何か考えていることはある?」
など、まずは親御さんの考えを聞いてみましょう。
その場で答えが出なくても構いません。
子どもが答えを用意するのではなく、親自身が考えるきっかけをつくりましょう。
親御さんが話したがらない場合には、無理に聞き出さず、時間を置くことも必要です。
③「遺言書=遺書」というイメージを変える

遺言書について、もう一つ大切なことがあります。
それは、遺言書に対するイメージを変えてもらうことです。
「遺言書」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
- 遺言書=遺書のこと
- 死ぬ直前に、辞世の句や、家族への最後の言葉、人生の思いを書き残すもの。
そんなイメージが根強くあります。
そのようなイメージがあると、遺言書を書くことに良い印象を持っていない、「まだそんなものを書く必要はない」と感じるのも無理はないでしょう。
しかし、遺言書は、単に家族へ最後のメッセージを残すためのものではありません。
遺言書は、法律で定められた方式に従って、自分が亡くなった後の財産の行き先などを、自分の意思で決めておくことができる法律文書です。
つまり、遺言書は、自分の財産について自分で意思決定するための手段なのです。
例えば、
「この家は、今後も住み続ける妻に残したい」
「長年世話をしてくれた人に、財産の一部を残したい」
「自分が大切にしてきた財産を、希望する人に引き継いでもらいたい」
このような本人の希望を、法的な効力のある形で残せるのが遺言書です。
また、遺言書は一度作ったら変更できないわけではありません。
法律で定められた方式に従って、後から撤回したり、書き直したりすることもできます。
ですから、死期が迫ってから慌てて作るものと考える必要はありません。
むしろ、元気で、自分の考えをしっかり伝えられるうちに準備しておくことが大切です。
親御さんに遺言書の話をする際にも、
- 死ぬ間際に書くものではなく、財産についての法律的な文書
- 何かあったときのために、自分の考えで財産の使い方を決めておくことができる
- 財産に関する書類なので、家族へのメッセージなどは不要(もちろん、書いてもOK!)
そんな説明から始めてみるのもよいかもしれません。
そして、行政書士などの専門家に相談してみる

親御さんが遺言書に関心を示し始めたら、行政書士などの専門家に相談することも一つの方法です。
親子だからこそ、話しにくいこともあります。
そして、親子間では遠慮がなく、つい強い言葉になってしまったり、些細なことから口論になってしまったりすることもあるでしょう。
また、財産の話はデリケートな問題です。
子どもが何度も説明するより、第三者である専門家から客観的な説明を受けた方が、落ち着いて考えられる場合もあります。
行政書士などに相談することで、遺言書にはどのような役割があるのか、どのような方法で作成できるのか、自分の希望を実現するにはどのような点に気を付けるべきか、といったことを整理できます。
子どもが勝手に相談を進めるのではなく、親御さんが納得したうえで、相談してみることをおすすめします。
また、専門家への相談は、必ずしもその場で遺言書を作ると決めるためのものではありません。
まずは制度を知り、自分に必要かどうかを考える。そのような相談でもよいのです。
まとめ|遺言書を急がせず、親が考えるきっかけをつくる
親に遺言書を書いてほしいと思っていても、子どもから話を切り出すのは簡単ではありません。
だからこそ、最初から遺言書を書いてもらおうとするのではなく、少しずつ関心を持ってもらうことが大切です。
今回ご紹介したポイントは、次のとおりです。
- 断捨離や自分史づくりなど、気軽なことから始める。
- 子どもの希望を押し付けず、親自身の意思を尊重する。
- 遺言書は遺書ではなく、財産の行き先を自分で決める法律文書だと伝える。そして、必要に応じて、行政書士などの専門家に相談する。
遺言書を作ることは、子どものためだけではなく、親御さんが自分の財産について、自分の意思を残すことにもつながります。
親の気持ちを大切にしながら、焦らず、少しずつ話を進めてみてはいかがでしょうか。
