遺言書は、自分の財産や意思を法的に明確に伝える重要な手段です。しかし、一口に遺言書といっても、法律で認められている種類にはいくつかのバリエーションがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
本記事では、遺言書の種類ごとに特徴を解説し、どのような状況で適しているかを紹介します。
遺言書の種類
遺言書の形式は以下のとおりです。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
- 特別方式の遺言
一般的な生前対策としての遺言書は、自筆証書遺言か、公正証書遺言で行われています。
自筆証書遺言

特徴
- 遺言者が全文、日付、氏名を自ら書き、押印することで作成します。
- 一部の財産目録はパソコンで作成したものでも認められるようになりました。
メリット
- 手軽に作成でき、費用がほとんどかかりません。
- 公証役場に行く必要がないため、秘密を守りやすいです。
デメリット
- 書式や内容に不備があると無効になるリスクがあります。
- 保管場所によっては、紛失や改ざんの危険があります。
- 相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
適しているケース
- 費用を抑えて簡単に作成したい場合。
- 特に第三者に内容を知られたくない場合。
公正証書遺言

特徴
- 公証役場で公証人が作成し、原本を公証役場で保管します。
- 証人2人の立ち会いが必要です。
メリット
- 法的に有効な形式で作成されるため、無効になるリスクがほとんどありません。
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
- 検認手続きが不要です。
デメリット
- 作成に手間がかかり、費用も必要です(公証人手数料や証人謝礼など)。
- 証人を手配する必要があり、内容が一部知られる可能性があります。
適しているケース
- 確実かつ安全に遺言書を残したい場合。
- 財産が多岐にわたる場合や、法定相続分と異なる分割を希望する場合。
秘密証書遺言
特徴
- 遺言書の内容を秘密にしたまま、公証役場で手続きする形式。
- 遺言者が作成した遺言書を封印し、公証人と証人2人の立ち会いのもとで署名・押印します。
メリット
- 遺言内容を秘密にしたまま公的な手続きを行えます。
- 自筆証書遺言よりも信頼性が高いです。
デメリット
- 公証役場で手続きが必要であり、費用がかかります。
- 自筆証書遺言と同様に検認手続きが必要です。
適しているケース
- 内容を秘密にしつつ、公的な証明を受けたい場合。
その他、特別方式の遺言
死亡危急時遺言(緊急時の遺言)
- 危篤状態などで通常の手続きが困難な場合に認められる特例。
- 証人3人以上の立ち会いが必要で、後に家庭裁判所の確認が求められます。
船舶遭難者の遺言
- 船舶内で死亡が差し迫った状況で行う遺言。
これらは特殊な状況で用いられるため、通常は自筆証書遺言や公正証書遺言が選ばれます。

これらは特殊な状況で用いられるもので、一般的な方法ではありません。
通常は自筆証書遺言や公正証書遺言が選ばれます。
おすすめは公正証書遺言
遺言書の中でも、公正証書遺言は最も確実で安全な方法としておすすめです。法的に有効な形式で作成され、無効になるリスクがほとんどない点が最大のメリットです。また、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がなく、相続人にとっても安心です。
さらに、相続開始後の検認手続きが不要であるため、相続手続き全体の負担を大幅に軽減できます。財産が多岐にわたる場合や、法定相続分と異なる分割を希望する場合、または相続人間のトラブルを避けたい場合には、公正証書遺言が特に適しています。
公正証書遺言を作成する際には、遺言業務を取り扱う行政書士に相談することで、スムーズかつ正確に進めることができます。確実な遺言書を作成したい方には、ぜひ公正証書遺言を検討してみてください。
おわりに
遺言書を選ぶ際には、自分の財産状況や家庭環境、そして希望する分割内容に応じて適切な方式を選ぶことが重要です。また、作成後の保管方法や必要な手続きについても考慮する必要があります。
遺言書作成は法律や手続きの専門知識が必要になる場合があるため、信頼できる行政書士に相談することをおすすめします。適切なアドバイスを受けることで、自分の希望を確実に形にし、大切な人たちへの想いをしっかりと伝えることができます。